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大学受験数学の概要と学習の指針受験数学の概観

大学受験数学の概要と学習の指針について

★大学受験数学の概要について
まず最初に、「受験数学」とはそもそもどのような意味合いを持つ分野であるのか、また大学側が数学の問題を通して受験生に対しいかなる資質を求めているのか、さらには受験生側がどのような能力を日常学習を通して伸ばしていけばよいのかといった受験勉強に取り掛かるにあたっての大前提ともいえる事項を一つ一つ確認していき、【確固たるモチベーションを築く】ことから始めましょう。
一般的に医学部受験生(に限らず全ての理系受験生)にとって、数学は受験の合否を直接左右する生命線となる科目であるといわれています。事実、数学の得点だけが著しく低いために他の科目は合格レベルにあっても総合点で不合格となるケースは非常に多いです。それくらい数学は受験生間で著しい得点差が付く科目です。また数学の学習理論は物理・化学など他の科目にも応用できることからも間違いなく最重要科目であるといえるでしょう。したがって、数学という科目(受験数学)の特性と学習法について、あらかじめしっかりと理解しておくことは厳しい受験勉強を方向性を誤らず進めていくためにもっとも必要な事項の一つであるといえます。

それでは「受験数学」の定義から説明していきましょう。一口に受験数学といっても、一般的な数学(趣味として・あるいは大学で専門として扱う数学)の学習と比較して何が求められているのか、ここではその点について少し掘り下げてみましょう。
現行の大学の二次試験(筆記試験)の数学では、どのような条件で試験が行われるのでしょうか。その点について考えるだけでもかなりのことが見えてきます。まとめると以下の3つの要素が挙げられるでしょう。

@全ての受験生が同じ問題文・解答用紙・試験時間という一律の条件下で学力を競う
須らく【入学試験】というものに求められる要件とは、徹底した客観性と公平性であることはいうまでもありません。したがって同じ問題・解答用紙・試験時間という一律の条件下で受験生の学力差を測るということはその要件に適った試験形式といえます。しかし入学試験である以上、機会は平等でも結果まで平等というわけにはいきません。与えられた問題文に対しどのような分析を加え解答方針を定めるかにはそれまでの経験に基づく個人差があります。純粋な学力・問題の取捨選択能力・試験時間の使い方などの能力差に応じて、しっかりと得点差がつくことになります。受験生間の数学の能力差を正確に反映させるためにはこの試験形式が最適であるというわけです。

A厳しい制限時間がある
したがって「ただ解ければ」良いわけではありません。他の大問との兼ね合いも考慮しつつ、「素早く」解答することが求められます。できるだけ解答用紙を過不足のない有効な記述で埋める必要があるため、1つの大問に対しても効率的に処理していくという観点が必要になってきます。
したがって、試験場その場での「ひらめき」「発想力」より「問題処理能力」(問題を“捨てることも含めて)が受験生に求められていると結論付けられます。

B出題範囲が決まっていて、したがってある程度「典型的」なパターンの出題をせざるを得ない
試験範囲が高校数学の内容に限られている以上、問題を解くのに必要とされる知識においてそれを逸脱することはありません。そこで、これまで出題されてきた問題を過去何年分ものスパンで見てみると、似通った問題が繰り返し出題されており、一種パターン化されていることがわかります。どのような手法を用いたらよいのか皆目見当もつかないような全く目新しい問題はそうそう出題されるものではなく、大抵は使い古された問題パターンの限りのあるストックの中から出題されます。したがって日常の学習においては過去に様々な大学で出題された、頻出の典型問題・応用問題を数多く学習し、いつでも使いこなせるように十分な練習を積んでおくことが重要課題となります。

以上の点から、「受験数学」というものの要点をまとめると、次のように集約できます。

★【受験数学の要点】受験数学とは、受験勉強においてどれだけのどれだけの「解法テクニック・定石」を身につけてきたのか、そして実際の入試の限られた時間内でいかにそれらを組み合わせ、素早く使いこなせるかを一律の条件下で競うものである

したがって、この定義をもとに数学の学習の基本方針や心構えといったものも自ずと決まってきます。


★暗記数学か思考数学か

【暗記数学】という学習法は和田秀樹氏により提唱されたものです。概念自体はこれまでの多くの優秀な受験生が「経験則」として持っていたものなので特別目新しいものでもありませんが、それを学習理論として一般化した功績は大きいと思います。
この【暗記数学】という学習理論は、これまでの数学の勉強法の主流であった、「じっくり考えて問題を自力で解くことでしか数学力は養成されない」という“常識”に対するアンチテーゼとして提唱されたものであり、「そもそも知らないことは幾ら考えてもひらめく訳がない」という主張が軸となっています。
【暗記数学】という用語はとても語呂が良いので、当サイトでも説明を簡単にするために使わせて頂こうと思います。
当サイトにおいては【暗記数学】とは、入試数学に頻出の解法テクニック・定石を習得していき、それらを用いて様々な問題を解けるようにしていくという学習理論を指すこととします。そこで当サイトにおける暗記数学の実行手順を以下に示しておきます。

●暗記数学の実践手順:【10分程問題を考えてみて何も方針が浮かばなければ解答解説を見る】⇒【何がわかればその問題が解けたのかを明確にする(解答プロセスを“理解”する)】⇒【解答を“理解”したら今度は解答を見ずに答案を再現していく】⇒【類題にあたってその手法をしっかり定着させる】

和田氏も同様のことを述べていますが、ここでいう暗記数学とは「歴史の年号を暗記する」といった、いわゆる単純暗記という意味での暗記ではなく、“麻雀”や“囲碁”を覚えるという意味での暗記に近いです。
つまり、解法テクニック・定石といったものの一つ一つは問題を解くという作業において確固たる「論理的意義」・・・なぜこの場面でこのテクニック(定石)を用いる必要があるのか・・・を持っており、それをしっかりと理解(納得)すること、さらには実際の問題において適用するという“経験”を積んでそれを完全に自分の思考回路に組み込ませるこという手順を踏むことで初めて「本当の意味で使える」テクニック(定石)が身に付くということです。解法テクニック・定石はあくまで「技術」であり、理解するだけでは使い物にはなりません。すなわち、「わかる」状態から「できる」状態に持っていくことが重要というわけです(この“わかる”と“できる”には結構な隔たりがあります)。

◆暗記数学についてのまとめ
●解法テクニック・定石はあくまで「技術」であるため、暗記するだけ・理解するだけでは使い物にならない
●暗記数学は「理解(納得)⇒実践⇒定着」の一連の手順を通して成立するものである

次に暗記数学の対極にあるものとして取りあげられることの多い【思考数学】について説明していきます。
【思考数学】とは語呂の良さ(?)から私が適当に決めた造語ですが、同じ言い回しをしている教育関係者もいるかもしれません。当サイトでは【思考数学】とは「じっくりと問題にあたって自力で正答にいたる」練習を積むことでいかなる場面にも通用する実戦的な数学力を養成していこうとする学習理論を指すこととします。
しかしこの【思考数学】は極めて突き放した印象のある学習理論だと思います。初学者はそもそも問題考察の前提となる解法テクニック・定石といったものを持ち合わせておりませんので、その状態で幾ら知恵を振り絞っても時間の浪費にしかなりません。【思考数学】が功を奏するのはある程度学習が進んだ後、具体的には「典型問題」のパターンを全て網羅した後となります。

◆思考数学についてのまとめ
●思考数学は受験勉強初期では全く意味を為さない。手持ちの道具がそもそも無いからである。しかし、解法テクニックを一通り習得し、一定以上の水準に到達した後(受験後半期)の学習においてはメインの学習法となる

したがって、数学の学習法として暗記数学が正しいか、思考訓練を重視した学習が正しいかという事項に対する結論は以下のように集約できます。これは大原則として次の項目以降にも踏襲していきますのでここでしっかりと頭に入れておいてください。

★【数学の学習法のまとめ】典型問題を習得する学習段階においては「理解(納得)⇒実践⇒定着」の手順を通した【暗記数学】を学習法の軸におき、応用問題・実戦問題をこなしていく学習段階以降では【思考数学】をメインに学習を進めていくのが最も効率的である