本文へスキップ

難関医学部合格に役立つ学習理論や各種情報を扱った総合情報サイト

大学受験数学を解くプロセスを理解する解答のプロセスとは

大学入試数学を解く思考過程を理解しましょう

★大学入試の問題を解くということは、具体的にはどういった行為なのでしょうか。数学者が未解決問題を解いたり新たな定理を作り出したりする場合の思考過程と何が異なっているのでしょうか。ここでは、大学受験数学を解くためにはどういった思考プロセスを踏めばよいのか、多少抽象的な話になるかもしれませんが出来るだけ分かり易く説明していきます。このページを熟読することで、一般に言われている「数学的センス」が本質的にどのようなものであるかが理解でき、大学入試数学を解くのに発想力といったものは全く不要であることに納得していただけるでしょう。その結果、受験数学の学習に対して適切なアプローチを取ることが出来るようになるはずです。

●まず【受験数学の問題を解く】ということについて、その定義を明確にすることから始めましょう。

大原則:大学入試数学の問題を解くということは手持ちの解法テクニック・定石のうち、どれとどれを組み合わせたら結論に至ることができるかを、問題設定の徹底した分析・解析を通して探っていくことである

これは公式の当てはめで解く「基本問題」を解く際は意識することはほとんど無いですし、それでも解答に行き詰ることはありません。しかし、本格的な入試問題(応用問題・実戦問題)を解くにあたって「知識としての解法テクニック」は持っているのに、実際には問題が解けないといった現象は、この【数学の問題を解く】ことの本質的な部分が理解できていない事に原因がある場合がほとんどです。すなわち、とにかく問題に手持ちの定石を「当てはめる」ことしか頭になく、問題設定の分析をしっかり行い結論に至るための要点をしっかり把握するという段階を忘れているのです。そのような場合は、上記の大原則を頭に入れておき問題に対し常に意識的に分析を行う習慣をつけておくだけで簡単に解決することも多々あります。以降はこの大原則を前提として話を進めてまいりますのでしっかりと覚えておいてください。
それでは、問題設定について分析・解析を行うとは具体的にはどのようなことなのでしょうか。以下に実際の模試や入試の場面で実行する機会が多い問題設定の分析法について説明いたします。

問題設定の分析とは:前提条件(問題設定)から結論(答え)までを隔てる論理のギャップを細分化(小問化)することで段階的に論を進め、結論へと詰め寄っていくことである

※これについては少し具体的に解説しましょう。例えば【A⇒F】という問題、すなわち「Aという前提条件(問題設定)のもとで、Fという結論(Fであること)を示す」問題が与えられたとします。このような問題では前提条件Aと結論Fは直接結びつけるには【論理の隔たり】があるため(だからこそ問題として問われているわけですが)、アプローチ法として事象を【A⇒B】【B⇒C】【C⇒D】【D⇒E】【E⇒F】というように細分化(小問化)し、段階的に論を進めて(紐解いて)いくことになります。
ただし、ここで注意点があります。この細分化(小問化)された各段階【A⇒B】【B⇒C】【C⇒D】【D⇒E】【E⇒F】は「論理的意義」が等価ではないということです。
例えば、この各段階のうち【B⇒C】の段階で選択したアプローチ法が、以降の【C⇒F】までの段階全体に影響を及ぼすということがあるとします。この場合【B⇒C】の段階で誤ったアプローチ法を取るということは以降論を進めるにあたって手詰まりが生じるということであり、この段階で正しいアプローチ法を取るということが問題解決への生命線となります。
逆に、例えば【C⇒D】【D⇒E】という段階が論理的に「自明」であり、殊更示しておく必要が無いということなどもあります。その場合はせいぜい簡単に記述するにとどめておくだけでよいのです。
模試や入試の実際の採点においても、この「論理的意義」の強弱にしたがって、配点の大小が決定されます。一般に論理的意義が高い部分(問題解決の生命線となる部分)が解答の前半部にある場合は平均点が低くなります。
したがって、結論へ至るための最重要箇所を見極めてそこを着実にクリアできるように、普段の学習・問題演習を通して経験値を積むことが最重要課題の一つということになります。

●次に受験数学と「発想力」との関係について説明していきます。いわゆる、【数学的発想力】とはどういったものを指すのでしょうか。また【数学的センス】のある人とはどのようなことに長けた人であるのでしょうか。ここでは受験数学という領域に限定して、私見を述べさせていただきます。

※数学的発想力とは、知識としての「解法テクニック・定石」を、適材適所で素早く自在に使いこなす能力のことであり、地道な問題演習の積み重ねがその大前提である
※「数学的センスがある」とは、問題演習を通して経験値を積むことで「解法テクニック・定石」を自在に素早く運用できるようになった状態を指す

要は全く同じことを言っているに過ぎませんが、結論付けられることは、受験数学においては一般的な純粋な意味での「発想力」や「数学的センス」というものを発揮する必要性は一切無いということです。受験数学の“難問”を解くことが出来たとしても、それは数学的センスの賜物ではなく、「過去に解いたことがある類似した問題」に照らし合わせて、それを手掛かりに解いたにすぎません。問題設定をしっかり分析するといった思考力は最低限発揮させる必要はありますが。
要するに、受験数学の領域では数学的発想力・数学的センスの正体は所詮この程度なのです。すべては経験値の賜物というわけです。

●それでは最後に、【受験数学の問題を解く】プロセスについて、上記の大原則に加えてその変則例をいくつか紹介していきます。

【変則例1】正攻法(多くの受験生が初めに考え付くような手法)で解くことが不可能であると思われる場合、全く別の切り口から考えてみるとすんなり解決する場合が多い

※いわゆる“難問”といわれる問題に対しては、真正面から定番の定石を用いても手詰まりとなるが、【アプローチ法の転換】すなわち全く別の角度から問題を見るという作業により、あっさりと突破口が見えることが多々あります。その全く異なるアプローチ法自体も、その場の発想力で見出すものではなく、過去に問題演習のより築き上げた、【有名難問とその解法】のストックから引っ張り出してそのまま適用するものなのです。したがって、「どうすれば大学入試の難問が解けるようになるか」という問いに対する答えは、「とにかく問題演習を通して経験値を積むこと」ということになります。

【変則例2】証明問題などで、結論から逆の過程をたどることによって、示すべき事項と手順を明確にしていくケースもしばしばある

※これについては少し具体的に解説しましょう。上に述べたように、問題を分析する典型的なパターンといえば【A⇒F】という問題、すなわち「Aという前提条件(問題設定)のもとで、Fという結論(Fであること)を示す」問題に対し、事象を【A⇒B】【B⇒C】【C⇒D】【D⇒E】【E⇒F】というように細分化(小問化)し、段階的に論を進めて(紐解いて)いくというものでした。
しかし「やや難レベル」の問題ともなれば、その初めの【A⇒B】という取っ掛かりの段階さえ進めづらく(見えづらく)なっていることさえあり得ます。すなわち条件Aから初めに何を示せばよいのかといった具合です。そのような場合、結論Fから【F⇒E】【E⇒D】【D⇒C】【C⇒B】というように論を逆に辿ることによって、示すべき事項Bを明確にすることが出来る場合が少なからずあります。そうなると後は本来の順番で解答を仕上げるだけとなります。論より証拠、まさにこの変則例2を実行する例題を以下に示しておきます。解答例は省略しますので各々ご自身で解答のうえ、ここで解説したエッセンスを実感してみて下さい。
【変則例2を実行する例題】e=2.718…を自然対数の底とする。f(a)=e^a−loga+a−2について、
f(1/2)<1であることを示せ。

【変則例3】高校数学の範囲外の定理・公式を用いて答えの数値を予測してから、方針について考えたり軌道修正する(例:ロピタルの定理で極限値を予想)

※原則として高校数学の範囲外とされる定理は模試や入試本番の答案には用いることはできません。これについては「○○大学では実際に使用しても減点はない」など諸説ありますが、受験生の問題解決への思考過程を評価するという入試の場で、単純な知識(それも本質的な理解が伴っていない知識)により機械的に解いた答案が、しっかりと高校数学の範囲内で論理的な考察をへて結論を導き出した答案と同等な評価を得られるとはとても考えられません。しっかりと定理の証明を暗記して、それを答案に書いた後で堂々と用いれば問題ないのではと思われるかもしれませんが、それでは出題者側の意図するものと解答の方向性があまりに食い違うことになり、やはり得策とはいえません。
しかし、答えの数値の予測に用いる分は何ら問題はありません。答えの数値が予測できると、解答に用いる定石を絞り込むことが出来る場合が多々あります。また、ロピタルの定理を例に挙げると、グラフを書くにあたって収束・発散を調べる際にこっそり用いることで、見当違いのグラフを書いてしまうことを防ぐことなどにも極めて有効です。すなわち、高数範囲外の定理はそのまま解答に用いることは出来ないけれども、解答の方針を誤らないようにするための補助的な役割を果たしてくれるのです。

【大学受験数学を解くプロセス】の解説はいかがでしたでしょうか。率直に申しますと、これらの解答プロセスは実際に問題演習を重ねていくことで、経験則として各々身につけて頂くことが理想なのですが当HPの学習理論(次項より詳述)を明確に把握して頂くためにも、初めに解説させて頂きました。
それでは次項よりいよいよ具体的な学習法の解説に入ります。